回る世界

「…何、これ?」

「…っ」


だから、こんなことになったのは慢心してた俺のミス。


「ねぇ…、これ誰の?」


震える声で静かに差し出したのは、赤く染まった煙草の吸殻。

捨てられてもなお存在感を放つ、魔女が放った真っ赤なルージュ。

ゴミ箱に捨てろって言ったのに…。


「これ、一樹のじゃないよね?」

「…」

「ねぇ、なんで黙るの?!」

「あ―…、えっと…」



上手い言い訳が思いつかなかった。

俺が煙草を吸わないのを佳澄は知っているし、俺の友達が口紅つけて煙草を吸ったなんて、そんな間抜けな言い訳が通用するとも思えない。

女友達?

家に呼ぶほど仲の良い子が思い付かない。

焦れば焦る程、言葉が喉に張り付いて何も言えなくなる。


「何で俺が焦ってんだ?」って、その時は疑問に感じることすら出来なかった。




「誰か、この部屋に呼んだの…?」





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