事の始まりは2時間ほど前。


彼女―大野佳澄(オオノカスミ)はいつものように何の連絡もなしにひょっこり俺の家に現れ、

このアパートの主である俺よりもくつろいだ様子で、これまた主である俺の許可なしに麦茶を冷蔵庫から勝手に取り出しては、

家に立ち寄る前に借りたという映画のDVDを見ていた。



映画は、「病気で死にそうな彼女と、そんな彼女を献身的に支え続ける彼氏」という、純愛を全面的に押し出したベタなラブストーリー。


主役の女の子が最近人気の若手女優、ってことで結構話題になったけど、笑い方はぎこちないし、泣き方も嘘っぽい。

何よりセリフが小学生の学芸会か!ってくらいひどい棒読みで、見ている俺のテンションはガタ落ち。


隣で鼻をグスグス鳴らしている佳澄が信じられなかった。





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