その声でいつか



踏み出す足を止めたのは、戸惑ったから。


見たことない彼女が、そこに居たから。



大きな目を濡らして、唇を噛みしめる。



…なに?


いまのいままで、笑ってたじゃん?


アイツに向けて。




視線の先。


立ち尽くす彼女は、ただじっと伊川の帰った方向を見てた。

震える手が口元を覆い、肩が大きく揺れた。


それでも彼女は伊川の居ない門までの道をずっと見てた。