感情的になるなんてらしくない。 何かに執着するなんて俺じゃない。 その何かが“女”なら尚更あり得ない。 雨音が響く昇降口。 ホールに反響する音が余計に耳障りだ。 噂は知っててもクラスなんて知らない。 少し首動かして歩いて、 『バイト頑張ってね!』 ちょっと離れたところから聞こえる声に吸い寄せられる。 俺を誘う…花の如く甘い、 その香りに。 その笑顔に。 その声に。