その声でいつか


尚も後ろから名前が連呼される。


『なぁ、恭ー恭ー頼むからー』

『あー、まじうるせぇってー…』


『柚杞!』






後ろで喚き出した連れに振り返った時、微かに彼女の声が聞こえた。


もう一度耳を澄まそうと集中したとき、駆け寄る足音が近づきすぐ側で声がした。


『もう、帰るの?』



俺の顔も名前も知らない彼女は俺の横を通り過ぎ、ユキを呼んだ。

俺の後ろにいるであろうユキを。