その声でいつか



雨の日だった。

あの時程、雨に感謝した事はない。








『今日、お前も行く?』

『行かねぇ、雨だし、だるい』

『んだよー、恭も愁も行かなかったら女の子盛り下がんじゃん?行こーよ!』

『行かねって』


んだよー来るって言っちまったじゃねぇかよ、どーすんの、どーなんの、雨なんかいーじゃん、自然現象じゃん、逆らえないじゃん


ブツブツうなだれる連れの横から少し離れて、窓に近寄る。

無数の雨の滴が窓を伝う。灰色の空から降る雨は止む気配が無い。

雨の日は好きじゃない。


雨音に紛れて声が聞こえないから。