その声でいつか


フェンスの向こう側。
歩く男女。

小さい女と背の高い男。

男の顔はいつも見えない。フェンスの前に壁のように植えられた桜の枝で、丁度男の顔の位置が、よく見えないから。

対照的に、小さいその女の顔はよく見えた。

その背格好に合う、可愛い感じの女。

あくなく整った顔の大きな目と弧を描く小さな唇。


その見た目には似合わないその声は、何故か俺の耳に残ってしまった。