「私の母は…私を産んで、捨てました」 父はいない。誰か、わからなかったという。 「だから、苗字もありません…母も父も、知らないので」 「便宜上、つけないわけにはいかないので…後見人をつけて、もらいました……」 そのことで辛いことにあったことは、数えきれない。 数えたってしょうがない。 うつむく。 ほかに言うことはない。 言ったって、過去は変わらない。 突然、温かい感触に包まれた。 隣に座っていた梧郎くんだった。