恭子が謝罪したことで、中居の心にあった怒りが一瞬にして消えた。
仕事のルールを守れなかったことに対して、強く厳しく指摘することをやめようと思った。

どうしてかわからないが、中居自身が初めて経験することだった。

これが、彼女の能力なのか・・・。
中居は、そう思った。

「恭子さん」
中居は表情が穏やかになった。

「はい」
恭子は無意識のまま、中居に謝罪をしていた。
そのことに気付いていない。
そのため、中居から何か文句をつけられても仕方ないと覚悟していた。

「あなたの仕事は何ですか？　」
中居が尋ねた。

「謝罪人です」
何か言われると思いながら、恭子はボソリと答えた。

「そうです。あなたは謝罪人です。そして、今日は、依頼人である島田市長の会見の日です。余計なことを考えずに仕事をして下さい」

中居は優しい口調で頼むように言った。

「わかりました」
恭子は小さな声で言った。