謝罪人 Kyouko

「妹の久美さんで、私は早野といいます」
女性従業員が、妹と自分の名前を告げる。

「もし、兄が取材のため何か失礼なことをしていたら、ご免なさい」
久美が恭子にすまなそうに言った。

「別にお兄さんは、私に何もしていませんよ」
恭子は、久美の態度を見かねて、つい言葉が出てしまった。

「そうですか。良かった」
久美は安心したように笑顔を見せた。

「久美ちゃん。まだ、かたずけが残っているわよ」
早野が窓際のテーブルを見て言った。

「はい」
久美は返事をして、窓際のテーブルに向かった。

「松山さんが、あなたのことを島田市長と関わりのある仕事をしていると言ってました。でも、十分に気をつけて下さい」

早野は忠告するような言い方をした。

「・・・・・・！？」
恭子がけげんな顔をした。

「余計なことを言って、ご免なさいね。気にしないで」
早野は、恭子の表情をみて、それ以上は何も言わず調理場へと向かった。