謝罪人 Kyouko

カウンター奥にある調理場から、もうひとり女性従業員が現れた。

彼女は、若い従業員と同じ制服を着ていたが、ずっと大人びている。

スラリと背が高く、黒髪を束ねて黒のパンダナの頭巾をしている。
モカブラウンの胸あてエプロンが少し汚れている。
その姿が、奥の調理場で料理を作っていることが想像できた。
どうやら、店の責任者のようにみえる。


「久美ちゃん、これ、あちらのお客様に」
彼女は、コーヒーカップがのったウッドトレーを、若い女性従業員に渡した。

「はい。あちらのお客様は、ハンバーグ定食です」
若い女性従業員は、トレーを受け取り注文を伝えて、窓際の客に持ってゆく。

女性従業員が、恭子をじっと見た。
恭子と目があう。

恭子は、どこかで彼女と会っている気がした。

「かしこまりました。しばらくお待ち下さい」
そう言って、女性従業員は調理場の中に入った。