大晦日の午後。
恭子は、木村に年末の挨拶に出向いた。

年の瀬だけあって、町は慌ただしい雰囲気が漂っている。

町行く人も、いつも以上に多く見られる。

恭子は、ベーカリーで予約していたロールケーキを買った。

そのロールケーキは、パリで修業したパティシエの主人が作ったもので、美味しいことで有名だった。そのため、一週間前から予約しないと買えないほど人気の商品だった。

ロールケーキは、木村へのお歳暮だった。

木村は、甘い物好きだったことを知って決めた。

恭子が箱詰めにされたロールケーキを手にして、オフィスのドアの前に立った。

オフィスの中から、木村の笑い声が聞こえてくる。
来客なのかと思い、ゆっくりドアを開けた。