私が謝罪したら、市職員採用の疑惑も許すことになる。
そうなると、久美の無念さを晴らすこともできなくなる。
松山の願いは途切れてしまう。

恭子の中に余計な思いが過ぎる。

島田がスーツの内ポケットからハンカチを取り出した。
島田から記者会見を終わらせて欲しいサインだった。

恭子の予定では、まだ早いと思った。
しかし、松山のことが気になって仕方ない。

松山が市職員採用の疑惑を問い質す前に、会見を終わらせたいという気持ちが強くなっていた。

そう思うと、恭子は島田の横に立っていた。

「あの・・・すいませんが」
恭子が記者達に向けて声をかけた。

会場内は静まりかえり、恭子に注目した。

「あなたは、誰ですか? 」
ひとりの記者が恭子に尋ねた。

「謝罪人です」 
恭子が答えた。

「しゃ、謝罪人・・・!? 」
松山は、けげんな顔で恭子を見つめた。