魔女の家にはくまだけが入りました。
みんな、魔女が怖かったのです。

家に入ってきたくまに、丘の上の魔女は言いました。

「悪い子には、お仕置きがいるね。」

それから魔女は、木でできた魔法の杖をくまに向けて、
えいっ、
とひとふりしました。

けれど、くまには何も起こりません。

変わりにロープがぷちっ、と切れました。

「だけど、悪くない子にはなにもいらないんだよ。」

魔女がそう言うと、くまは

「ぼくはわるいこだ。」

と答えました。

魔女はしばらくだまった後、

「…では、木におなりなさい。町の人たちはそれで許してくれるでしょう。」

とくまに言いました。

くまは

「はい」

とだけ言って、うつむきました。


くまはその日から、町の真ん中に立つ木になりました。


みんなはその木を、くまの木、と呼びました。

大人は、怖がって近寄りませんでした。


けれど、小さな子供にとっては、木陰で休んだり、木登りをしたり、だるまさんが転んだをするのにとてももいい場所でした。

子供たちが遊ぶようになって、くまの木には小さな小さな実がたくさんなりました。
黄色、緑、ピンク、紫…と色はバラバラでした。

それはだんだんと大きくなって、りんごぐらいの大きさになりました。