時刻は十一時前になっていた。
「澤村……お前の家族って何時頃に帰って来るの?」
山岸君は時計と私の顔を交互に見ながらそう聞いてきた。
そっか。山岸君、知らないんだ。
「私、一人暮らしなの」
「えっ? なんで……いや、そうなのか」
山岸君は聞き過ぎたと思ったのか途中で話すのをやめてしまう。
だけど私には山岸君が聞きたいことがわかったので、説明するために一つ深呼吸をした。
「私が中学卒業すると同時に親が離婚したの。だけどお互いにもう新しい相手がいて。だから私はそれからずっと一人暮らしなの」
私は緊張が伝わらないように出来るだけ軽い口調でそう話した。