窓の外を眺めたまま無言の渡邊部長。


タクシーは行き先を知っているかのように走る。



車が止まったのは、私だって知っている有名なホテルの車寄せ。



「ファミレス以外だと、こんなとこしか知らなくて…。」


“こんなとこ緊張するな。”


「…駄目か?」

「いえ……。」


食事の席に通され、また緊張。


周りはオトナばかり。


渡邊部長までいつもと違って見える。


私だけ場違いみたい…。


「どうした?大人しいな?」

「……。」

「やっぱり此処じゃ駄目か?女の子はわかんないなぁ。」

「そうじゃないんです。」

「……?」

「こんなとこ来たこと無いので、緊張しちゃって……。」

「なんだそうか。じゃあ食事が終わったら2人っきりになれるところに行く?」