中庭に桜の木を見つけた私は、桜の木の下で泣いていた。

「彼女がいるって…分かってるけど…っ」

桜の花びらがヒラヒラと舞い降りてる。
私の頭にちょこんと1枚花びらが…

『亜紀は桜みたいだよな』

『何で?』

『教えな~い』

中学の入学式では私の隣に陽向がいた。校門のところに咲いてる桜を見ては、陽向は私にいつも言っていた。

「あの頃は幸せだったなあ~……ッ」

やっぱり涙が止まらない。
我慢してた涙を全部出してしまおう…

「…先客?」

後ろのほうで声がした。男の人の声…どこかで聞いたことあるような…

「あ」

…さっきのイケメンくん!私は涙を慌てて拭いてその場を立ち去ろうとした。

「あ、どうぞ!帰るから!」

「ちょ…おい?」

私の腕を掴んできた。
気付かないで。涙を見ないで。

「何…?」

「何って…お前…泣いて…」

「泣いてなんかないよ?目にゴミが入っただけ」

無理をして笑った。私…いつもそうだな。
嘘ばっかりついて、下向いて生きてる。

最悪だよね…

「また明日!」

イケメンくんの手を振り解いた。イケメンくんは私に返事をすることもなく、黙って桜の木下に座った。