『いいよ』


フィリアは伏せていた顔をあげた。


『殺して、フィリア。』


ディーン……否、ファイは笑っていた。

今までの様な、どこか狂気を孕んだ笑みなどでは無く、本当の、温かな笑み。


『ファイ…』


『さっき言っただろう?
僕は、君を救いに来たんだ。

……本当は、わかってたんだ。
君がもう、誰の助けも必要としてないこと。

でも、諦めきれなかった。
――その結果が、これだ。

僕は、フィリアを苦しませに来たんじゃない。
そのことは、わかって欲しいんだ』


フィリアの目から、涙が零れる。


しかし、フィリアは立ち上がった。
唇を噛み締めて、ファイに告げる。



『いや』


ファイが目を見開いた。


『なんで…』


ファイの呆然とした呟きに、フィリアは怒った様な顔をしている。


『駄目。
絶対に、それだけは。
私が、なんとか、する』


しかし、フィリアは満身創痍。
魔族から受けた傷は塞がっていない上、出血が多すぎて今にも倒れそうだった。

それでも尚、ファイへと近づいていく。