『フィリアはこの塔の最上階にいるよ』


螺旋階段を上りながら、ディーンはリーフに言った。


その背中を睨みつけながら、リーフはディーンの後を追う。


『罠じゃないだろうな』


ディーンはその言葉に笑って後ろを見た。


『そんな面倒な事しないさ。
――ひとりで不安なら、バルドを連れてくればよかったじゃないか』




そう、今ここにはリーフとディーンしかいない。

バルドは外で、何かあったときの為に待機している。

バルドはついていくと言ったのだが、リーフが止めた。


『本来なら、ここは次代の国王と女神しか入れない聖域だ。
入れるわけにはいかない。
大体、僕にとってみれば君が入れる事自体不思議だよ』


『……クックックッ』


とうとうディーンは堪えきれずに笑い出した。


『僕が何で入れるか?
その理由はさっき君が言ったじゃないか。
――僕も、国王候補なんだよ』


『なっ…』