『――さてと』


ゆっくりとディーンが振り返る。
その目線の先にいるのは、リーフとバルド。



二人は、フィリアが引きずり込まれた塔を凝視している。

そこには、刺さったままの血に濡れた宝剣と、血溜まりだけが残されている。


ディーンはフッと微笑んだ。


リーフの前に立ち、目を合わせる。


『どう?
目の前でフィリアが刺されるのを見るのは』


その言葉にリーフはディーンを睨みつけた。


『どうして…どうしてこんな事したんだ、ディーン!!』


その剣幕に少しおどけて、ディーンは首を傾げた。


『どうして?
――必要だったからだよ。
………君は、まるで解っていないみたいだね!!』


突然、堪えきれない様に叫ぶ。

だが、次の瞬間には気を取り直した様にディーンはまた笑った。


『…仕方ないか。
君は、何も知らないんだから』



『――?』


『……フィリアに会いたいなら、塔の中においで。
まぁ来ても無駄だけど、ね』


それだけ言うと、自身も塔の中へと歩き出す。


リーフとバルドは急いで後を追った。