クレイの体の中に、直接自らの息吹きを送り込む。
全ての不浄を祓う、神の息吹き。
私が唇を離すと、段々とクレイの姿は透けていった。
涙が溢れる。
そんな様子に、クレイは苦笑した。
『あぁ、泣いてはいけないよ。
私を想って泣く必要は無いんだ。
優しい君に、無理を言ってすまない。
でも、約束してくれ。
リーフという者を頼むよ。
――泣かないで、フィリア。
そうだな、私が君に予言しよう。
ちっぽけな人間の戯言だけど、聞いてくれ。
―――君は、幸せになる。
例え、今がどんなに辛くても。
どんなに悲しくても。
フィリア、幸せになるんだ。
これも、私からの最後の命令だ』
やっぱり貴方は酷い。
最後に、私にそんな事を言うなんて。
私が頷くしかないと、わかってるくせに。
そう思ったけれど、私は少しでも貴方を心配させたくなくて、結局頷いてしまった。
『うん。
私、幸せになるよ。
でもね、クレイの事、絶対に忘れない。
こんな想いも、絶対クレイが最初で最後。
何万、何億年たっても、世界が滅びる日まで、私は貴方の事、ずっと覚えてるから』
もう、靄のように薄れて。
今にも消えそうな貴方に。
私は、永遠を誓う。
私の言葉に貴方は笑った。
『フィリア
私の愛しい魔王。
君を愛しているよ。
――さあ、笑って。
幸せになるんだ』
私の求め続けた愛と違う事は、わかっていた。
わかっていた、でも。
貴方を悲しませたくなくて。
困らせたくなくて。
――苦しませたくなくて。
私は、精一杯、貴方に笑いかけた。

