フィリアはそっと、自分の目の前にある大樹を見上げた。

とてもとても大切な、思い出の木。


この木はフィリアの愛と悲しみと後悔と―――そして憎悪のしるし。





今も、耳を澄ませば聞こえてくる、貴方の声。


フィリアはそっと大樹に寄りかかり、そのまま腰を下ろした。




その瞬間流れ込んでくる、刹那の記憶。

フィリアはそれに、たゆたう様に目を閉じた。