緑ノ刹那

『これは罰だと、神は言った。
世界から力を奪った罰。
そして何より重い罰を背負ったのは、フィリアとサヤだ』


レイの言葉にリーフがサヤを見ると、サヤはそっと目を伏せた。


『紅の魔王である私は、唯一"死"というモノがあった。
ただ、百年生きて消滅して、魂と記憶はそのままに、新たな躯に転生する。
百年の間は何をされても死なないがな。

――これを"死"というのかは、知らない。
けれど、永遠の刹那、瞬きにも等しい時間だが、私には死がある。
その幸福感と、他の皆への罪悪感……それが私への罰』


『そして』


レイが後を続ける。


『フィリアへの罰は、生き続ける事。
世界の始まりから終わりまでを生き続け、最後は何もない世界で独りで死ぬ。
それが、いきとし生けるもの全ての祖であるフィリアに課せられたモノ』


『元々、フィリアの存在から全てが始まったんだ。
だから全てを終わらせるのもフィリアの役目だと神は言った。


――あの時フィリアには、2つの選択肢があった。

1つ目は、このまま時の流れに身を任せて、自然に全てが壊れていくのを待つ事。

そして2つ目は……この世界の全てをフィリアの手で壊す事。


フィリアには、私達が及びもしない力があった。


それこそ、世界を滅ぼせる程の。


フィリアにとって2つ目の選択肢は、あまりに簡単だった』