緑ノ刹那

室内に静寂が訪れる。

レイとサヤは青ざめて、フィリアは苦渋に満ちた表情で、男を見ている。

リーフとバルドは未だに会話の内容についていけない。


男はちらりとリーフ達の方を見た。


瞬間、バルドの姿が消える。



『なっ……』


驚くリーフに、男は変わらず笑った。


『部外者には出て行って欲しくてね。
べつに危害は加えてないから安心していいよ。
……紹介が遅れたね。
私は君らが神と呼んでいるモノだ。
そして彼女達"魔王"の――何と言うのかな、親の様な支配者の様な……そんな感じ。

名前はないから、そうだな…
うん、私の事はシキと呼んでくれ。
フィリア達もな』


さらりと大胆に全てを語り、まったりと空いているソファーに座るシキ。

そんな彼に、フィリアは非難めいた目を向けた。


『シキ。
何故私達の邪魔を?』


『ん?
邪魔はしていないよ。
まぁ、少しならしたけど、君が本気を出せば問題無い程度だ。

――なのに君は、本来の姿にならなかったね、フィリア。
何故だい?
私は、そんなニセモノじゃなくて、本当のフィリアに会いたかったというのに』


『それは…』


フィリアが目をそらす。


シキは嘆息した。


『フィリアと2人で話したいから、出て行ってくれ』


リーフはその言葉に反論しようとするが、体が勝手に動いた。

慌てて見ると、レイとサヤも同じな様だ。


ヒラヒラと手を振るシキを最後に、リーフ達は為す術もなく部屋から追い立てられた。