『フィリ』


たまらず、リーフは声をかけた。

フィリアは、リーフがいるのをわかっていたのだろう。
大して驚かず、木を見上げたまま、

『…なぁに?』

と返事をしただけだった。



『それは、ファイの……』


何となく、最後まで言えない。


『そう。お墓。
……クレイが死んだ時も、こうやったわ。

どうしても、お墓を作ってあげたかった。
たとえそれが、私の自己満足でも』


顔が見えないから、フィリアがどんな表情をしているかわからない。
それでも、ありありと伝わってくる、痛み。


それを、やわらげてあげたくて。


『フィリ、戴冠式の前に、終わったら話したい事があるって言ったの、覚えてる?』


ついつい、言ってしまった。




『……うん』


少しの沈黙の後、短い返事が返ってくる。


フィリアも、今では何となくわかるのだろう。

リーフが、何を言おうとしているのか。



こちらを振り向かないのは、彼女なりの小さな恐れと拒絶。




それでも―――