「お母さん、千尋がりんごくれた。アップルパイ食べたいな。」
お母さんにりんごを見せる。
「真っ赤なりんご。ありがとね、千尋君。」
「いえ、姉貴からなんで。」
お礼を言われて少し赤くなる千尋。
「千尋君、シチュー食べていきなさい。さぁそこに座って。海美、シチュー千尋君に。」
「はーい。」
シチューをあたためて、千尋の席に持っていき千尋に渡す。
「サンキュ、海美。」
どんな小さなことでも、お礼を言う千尋に嬉しくなる。
「海美、もう食べないのか?」
「うん、お腹いっぱい」
陸玖はまだシチューを食べてる、多分おかわりしたんだろうな。
「千尋、今まで部活か?」
「あぁ、試合近いから。」
陸玖と千尋は同じ高校の同じクラスで仲がいいみたい。
二人を見てると、二人と同じ高校に行けばよかったな、なんて思う。
だけどクラスに男の人がいるのは、やっぱりいやだし。
「海美、りんご切ったわ。食べる?」
「食べる!ありがとう。」
「アップルパイは明日ね。」
お母さんが切ったりんごが入ったお皿を渡してくれた。
「千尋、いただきます。」
「おう。」
千尋がくれたりんごを食べると、いつも食べてるりんごよりも甘い気がした。
「甘い、美味しいよ。千尋。」
「そっか、よかったな。」
千尋が笑う。だから、私も笑った。

