「今日は月が綺麗ですね」
そんな望月の声に、青年は頷いた。
きちんと返事をしてくれるあたり、青年の性格の良さを感じた。
素直で、律儀なのだろうと勝手に解釈する。
「貴方もお散歩ですか?」
そういいながら、望月は青年に近付いた。
青年は俯いたまま。
お面をつけている所為で、どんな表情を浮かべているのかはわからなかった。
青年まであと2、3歩。
「…あの」
少しの間を置いて、青年が口を開いた。
その声に立ち止まる。
中途半端に紡がれた言葉に首を傾けた。
「あの、近付かないで」
青年は、言いながら半歩後退した。


