幼稚園に入る前のこと…

親は夜まで仕事だから
休みでない限り遊べない。

近所の友達も暗くなる前に親が迎えに来て
帰ってしまう…
「またねっ」
「バイバイ」
と言いながら
親と手を繋ぎながら帰る
子どもたちが
すごくうらやましかった。

あたしは日が暮れるまで
ずっと庭で遊んでた。

すると隣の家から
「バンッ!」
と音が聞こえた。

あたしは気になって
庭にある木に登り
隣を覗いてみた。

そこには年上の男の子が
グローブをはめ野球ボールで
壁当てをしていた。

あたしはその男の子を
何十分も見てた。
子どもながらに多分
カッコ良いと思ったのだろう。

でも本当カッコ良いです…


あたしは彼に
見とれ過ぎて足を
踏み外してしまった。

「ギャ━━━━!!!」

あたしは怖くて目を
つぶって落ちていった。

「イッてぇー」

あたしは落ちたのに
痛くなかった。
目をゆっくり開けると
腕の中にいた。

彼が助けてくれたのだ。
あたしはサッと立ち
すぐお礼を言った。

「ありがと…」

「あぶねぇだろーがッ!!!」

あたしは彼の大声に
ビックリして泣きそうだった。

「ごめんなさぃ…」

震えた声で謝って
あたしは庭に
戻ろうとした。


「1人で遊んでるの?」

あたしは驚きながら
振り返った。

「うん。みんな帰っちゃったから…」

「ふーん…」

あたしはずっと彼を
見てた。
すると…

「グローブそこにあるから使えよ。」


嬉しかった。
友達が帰って
寂しかったあたしを
遊びに誘ってくれて。

「ねぇ、名前は??」

「裕(ゆう)…」

あたしはその日から
裕君と呼ぶようになった。

裕君は親が
帰ってくるまで
ずっと一緒に
キャッチボールをしててくれた。

まさに初恋…