「え?」

「家にも帰ってない、刑務所にもいない。……だったら、姉貴は今どこにいて、どうやって生活してるの?」



俺の疑問に、母さんは答えをくれなかった。


ただ一言、俺にこういって電話を切った。





「悠、もともとあなたに、姉なんていなかったのよ。忘れて」





しばらく、その場に呆然と立っていた。

携帯が手から落ちても拾うことはせずに、ただその場に。


自分でも、どこを見つめて何を見ているのかわからないほど、視界はゆがんでいた。

泣いているわけではないのに、視界はマーブル模様だ。


呼吸をするのも忘れるほどに、静かな怒りが湧き上がった。