俺がいった瞬間、病室は空気さえ流れていないかのように、静かになった。



ただ、姉貴の泣き声と、ぽろぽろと滴る涙の音だけが、響いていた。





「姉貴」



泣き続ける姉貴に、俺はそっと近づいた。



「……俺のこと好きなんて、勘違いだよ。ただ、欲求不満だったから、近くにいた俺に手出して、それじゃ罪悪感だけが残ってしまうから、好きなんだって思い込ませたんだよ。自分自身に、さ。そしたら、こんな積み重ねてしまった……。ねぇ姉貴?」



俺は、姉貴に対して初めて出すであろう自分でも驚くくらいに優しい声で、姉貴に諭した。



「今からでも遅くはないよ。……自分に、正直になりなよ。狂った愛情も、狂いすぎた歯車も……全部消し去って。やり直そう? ね?」



……ごめんね、ゆう。春ちゃんも……ごめんなさい……っ。



そういって、何度も何度もうなずく姉貴は


怖くなんかなくて、全然弱い普通のお姉ちゃんで。





……元に、戻れる。



そんな気がした。