その日の夜、麻衣は仕事に出掛けて行った。



麻衣が化粧をしている時、


「北斗くん、一緒に住んでたんだね」


と私が言うと、


「でも麻衣は夜ほとんどいないし、北斗もあまり家にいないし、たまにしか顔見ないんですよ」


と、麻衣は寂しそうに微笑んだ。


そして、


「あ…、言っておけばよかったですね……」


朝のことを思い出したのか、少し申し訳なさそうにそう言った。


「ううん。アイツも麻衣の兄弟なのかと思ったけど……」

「みたいなものですけどね」


私が北斗のことを“アイツ”と言ったからなのか、言葉に少しトゲがあったからなのか、麻衣は楽しそうに笑った。