「バッカじゃないの!?」


こんな年下にからかわれたと思うと、なんだか恥ずかしくなって、私はそれだけ言って黙った。


「何?どういうことだよ?」


笑う北斗と黙り込む私をを見て、海くんは不思議そうな顔をする。



「里緒菜さん、何かあったんですか?」


ちょうど出来上がった料理を運んで来た麻衣が、心配そうな顔をした。


「ううん…。何もないよ」

「里緒菜さんが大きな声出すなんて珍しいから……」

「ホント、なんでもないから」




私は感情をあまり表に出さないタイプで、麻衣もそれを知っている。


だから、大きな声を出した私に驚いたようだったけど、麻衣はそれ以上何も聞いてこなかった。




いつでも冷静な私。


怒ったり、泣いたりなんてしない。


誰の前でもそうしていた。



麻衣の前でも、長谷川さんの前でも……。


自分ではわからないけど、そう演じてるのかもしれない。


誰にも本当の私を知られたくないと、どこかで壁を作っている。




本当の私なんて、自分でもわからないけれど……。