「キスしてください………。」
ねぇ、私の事ちゃんと見て?
「ん…。」
曖昧な返事。
貴方はいつもそうだ。
私の頭に腕をまわして重なるだけのキスをした。
唇が離れて…少し淋しげに彼を見上げると、今度は深い口付けが降ってきた。
「んっ……んぁ………。」
こんなキスをするのは初めての事で、思わず声が漏れてしまう。息の仕方も分からなくて、だんだん、息苦しくなってくる。
私は目に涙を浮かべて、貴方を見上げながら、もうムリと訴える。
それでも止みそうにない大人のキスに、私は意識を虚ろにさせながらも、弱々しく胸板を押し返す。
するとようやく気づいてくれた貴方は私を見て、一瞬目を見開くと急いで唇を離してくれた。
「ぷはっっはぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
唇を離した瞬間、求めていた酸素が入ってくる。
少しして、息が調って来た私は貴方を見上げてみる。
──ほらね。
心ここに在らずと言った表情で私を見下ろしてくる貴方。
きっと今、この人の中に私は居ないんだ………。
今みたいに激しくはないけど、重なる程度のキスなら今までにも何度かした。
初めて貴方とキスした時ね、私本当に嬉しかったの。

