「どうしたの?なんか有ったの…」


「…うん、運命の出会いっていう奴がね…」


「はぁ?」


あたしは則子や登校してくる生徒達の怪訝な表情を気にする事無く校門の前にぼ――っと立ち尽くした。

         ★

運命の出会いって言う奴の余韻に浸る間もなく、あたしはずるずると則子に引きずられて教室にやって来た。


あたしは今日一日、どんなに大切な授業が有ろうが指名されて答えが出なかろうが両手にバケツ持たされ廊下に立たされようが、どんな試練にさらされても平気のぷ――だ。


なぜならば、あたしは見事に運命の出会いに成功したからだ。


あぁ、爺、たまには良い事、言うじゃぁないか。うん、今回は褒めてやろう。


「あ、貴子さん、おはようございます」


始業ぎりぎりに教室に入って来た幸が、あたしを見つけるといつもみたいに犬っころとおんなじノリであたしの席に向かって、きゃんきゃんと走り寄ってくる。だけど、今日のあたしは何時もと違う。