数回しか訪れた事の無い、月の館だが、ここ最近、慣れてしまった様だ。改めて人間の順応力の偉大さを感じて見る。


あたしは館の大きな扉をすいっと開く。


その何時もの扉は、とてもでかい扉で、人の力では開きそうにないのだが、あたしの力でも簡単に開いてしまう不思議な扉だった。


扉の奥では、爺と若様が、なにやら、ひそひそ話をしていたが、あたしが館に現れた事に気づいた若様は、満面の笑みを浮かべると、両手を軽く広げてあたしに向かって歩みよって来た。


「これはこれは貴子さん。今日もわざわざいらっしゃって頂けましたね」


あたしは若様の笑顔に舞い上がる。


「いえ、わざわざなんて…」