「お手を御上げ下され、貴子殿」


これは若様の声だった。


あたしは目がハートの形になっているのを気にする事も無く若様に向かって両手を組んでぱっと振り返った。


「えらく、分かりやすい態度じゃのう」


爺は少しふてくされた様に、後ろで手を組むと、たらんと首を項垂れて、こつんと足もとの小石を蹴っ飛ばした。


でも、あたしは爺の態度なんか全然気にせず、若様に嬉々として尋ねる。


「若様、昨日聞きそびれたのですが、あたしを此処に招待して下さった理由と言うのは、何で御座いましょうか」


すると爺が「うむ、呼んだのは他でもない」とそこまで言った処で、若様が爺の言葉をひったくって