「まぁ、まぁねぇ。こんな状況だしね」


「それなら心配有りませんよ。貴子さんは、ちゃんと生きてます。このツアーが終わったら、ちゃんと元の体に帰れます」


あたしは若様をじっと見つめて何度かぱちぱちと瞬きして、再び彼の顔をじっと見詰めた。


「ツアーって、何処に行くの」


あたしの質問に、若様は爽やかな笑顔を見せ、優しい声で答えた。


「私達が向かうのは『月の館』です」


そう言うと彼は窓の外を指さした。その先には、煌々と輝く満月が冷たい氷の様な光を地上に降り注がせていた。


「月の館?」


あたしは、その意味が良く理解出来ず、再び若様の顔をじっと見詰めた。