「なによ、そんな入り方。怪しいぞ」


あたしは椅子に跨る様に座ると背もたれに頬杖をついて、弟の顔を、まじまじと見詰めた。


「怪しいのは姉貴だろ。何一人でぶつぶつ言ってるんだよ?」


弟は怪訝な表情であたしの部屋の中をぐるりと見渡す。


「ん?別に何も。あんたの幻聴じゃないの?あたしは別に、独り言なんか言ってないぞ」


あたしは、あっけらかんとしらばっくれて、全てを弟になすりつける工作に出る。


「う、ん、そう?」


弟はあたしの部屋の中をしきりに見渡しなしながら異常が無い事を確認すると、それでも納得行かない表情で首を引っ込め部屋のドアを静かに閉めた。