コロッケは甘くてはいけないと思う。


あたしはお母さんの作ったコロッケが好きだった。だけど、今夜は、何となく味がしない…


「姉貴、それ食わないの?」


育ち盛り全開の弟が、あたしのコロッケを狙って箸を出す。


何時もなら、その勝負、受けて立つのだが、今夜はそんな気持ちになれなくて、あっさりと獲物を弟に取られる事と、あいなった。


あんまりにもあっさりと獲物を渡したあたしに向かって弟はちょっと拍子抜けした様だった。

「いいのか、姉貴、ホントに食っちゃうぞ」


「へあ?…あぁ、ど――ぞ」


その声を聞いて、弟はすかさずあたしの額に手をやる。