「そうじゃのうじゃ無いでしょうが。自分で自分が気持ち悪くないの?自分が二人って…」

この質問に、爺は少し困った様な表情を浮かべるとちらりとあたしを見て、くるりと背を向けて、遠くを見る様な仕草をした。


「わしも、若かったという事かのう」


爺がしみじみとあたしに答えた。


何となく触れてはいけない質問の様な気がしたので、あたしは、それ以上、深く突っ込む事はしなかった。うん、大人の対応だ。

         ★

月の館では、若様が昨日に引き続いて、庭の花に水なんかあげたりして居る。


はぁ、美青年は、何やらせても絵になるねぇ、と、しみじみと考え込むあたしに気が付いたのか。


若様は、あたしに向かってにっこりと微笑むとゆっくりこちらに近付いて来た。


あたしは、若様の顔を見るだけで、心臓ばくばく物だ。そんでもって、ひょこっと口から飛び出して、きゃはははとか笑いながら駆け回りそうな勢いだった。