「どわ――――はははは!」


爺はあたしを指差すと、度派手な笑い声を発しながら、その場でばたばたとのた打ち回った。


あたしの部屋に金属バットが無かった事が爺にとって幸運と言えるだろう。


「くんぬぅお―――――」


あたしは爺の首根っこを捕まえると、開け放った窓に向かって爺を思いっきりブン投げた。


爺は重さが無くて、そのまま月に向かって吸い込まれる様に消えて無くなった。


「ぜ――ぜ――」


あたしは怒りで肩を震わせて爺が飛び去った方向を見据えながら大きく息をした。


すると、不思議な事に、今迄の悲しみや怒りや、何とも形容しがたい感情が心から消えて無くなっている事に気が付いた。