「あたしの事…


いままで誰もわかってくれなかったのに…


なんで?」



南條は号泣している少女をフワリと抱くと、背中をさすりながらこう言った。



「今のお前が、昔の俺に似てるんだよ。


だから今お前が何を考えてるのかとか、どうしてほしいかとかすぐわかる。


でもな、他の大人たちにはお前の口からちゃんと言わないと伝わらない。


全部自分で言わないと。


助けてほしい時は助けてほしいって素直に言ってみな。


絶対に助けてくれる。


お前を大事に思ってる人はお前が気付いてないだけで、たくさんいるんだから。


俺も含めてな」



少女は声を上げて泣き始めた。



今まで我慢してきたものを全て吐き出すように。



南條はそれ以上は何も言わず、泣きじゃくる少女の背中をさすり続けた。



しばらくして、落ち着きを取り戻した少女が小さな小さな声で言った。









「素直に…なりたい」










「そうか。


だったら友達を作ってみようか。


毎日1分でもいいから学校に来い。


そうすればきっと、自然に話が出来るようになるよ。


一緒にがんばろうな」




少女は南條の腕の中で小さくうなずいた。