「何をやってるんですか?」



尾田とは別の声だ。



その声の主は、尾田が振り上げた手の手首をしっかりつかんでいる。



背は尾田より頭一個分くらい高く、尾田にしてみればとてつもない圧迫感があるに違いない。


「南條…」



少女は眉間にしわを寄せ、そうつぶやいた。



「尾田先生。この子に何をしようとしてたんですか?」


「い、いやぁ…別に何も…」



尾田の額には血管のかわりに大量の汗が噴き出している。



「だったら、僕が今つかんでるこの手はなんなんでしょうね」

「た、ただのびをしていただけですよ!」



尾田は南條の手を振り払い、走り去っていった。







「あんなに言い訳が下手な奴見たことねぇよ」



南條は尾田の背中を見送りながらそう言うと、すぐに少女の方に向き直った。