南條が死んだ。



殺された。



テツの上司に。



少女はテツを恨んだ。



そんな事をしても意味がないと知っていても、それでも恨んだ。



だから、南條の死によって少女の心が空っぽになる事はなかった。



皮肉にも、テツへの恨みによって少女の心は無にならずにすんだのだ。



少女は南條に何を教えられたかを考えた。



少しは勉強しろ―



友達を作った方がいい―最後まで人を信じろ―



少しくらいは外れてもいいが、出来れば真っ直ぐに道を進め―



素直になれ―



少女は学校の先生が好きではなかったが、南條の事は好きだった。



だから、これからは南條に教えられた事を守っていこうと少女は決めた。



本人が死んでからでは遅いのかもしれない。



でも、南條なら許してくれるだろう。



見守っていてくれるだろう。



少女は南條のような大人になろうと思った。



この時が、少女が心を入れ替えた瞬間だった。