「ちょうど良かった!先輩の事送ってもらっても良いですか?」

首を傾げてにっこり微笑む矢田部が、俺には天使に見えた。

大村の事が気になって仕方なかったが自分から声を掛ける勇気もなくて、俺はフラフラになっている大村を傍観していた。

このまま黙って見ていれば、ひょっとすると他の男に連れ去られてしまうかもしれないのに。
それが分かっていながらどうする事も出来ない自分がもどかしかった。

だからおれは矢田部の提案を二つ返事で引き受けた。

もし大村が酔っ払ってなかったら、送るなんて事は考えられなかっただろう。
矢田部の申し出はありがたいものだった。