「それを”売り”にしてしまうと
曲は”それを見る為”の
都合の良い”理由”になってしまう

そしてそれを辞めてしまえば
”つまらなくなった”という
音楽をやっている上では
意味の無い評価しか残らない」




「…………」




「ブームってあるけど

まあブームがあれば、瞬発的に潤うから
ちょっとウハウハな部分も
正直、あったりはするけどさ


ブームで来たお客さんは
ブームが終わればもう来ない


でも廃れたからと言って全ての人が
音楽を嫌いになるわけじゃない


流行りで盛り上がった物って…
あとは、俺が知ってる所だと
釣りだってそうかな




好きなやつは、ずっとやってる
音楽とか楽器っていうのは
そういう類の、永遠不変のものだ


だから ―――


そこに残る人たちが喜ぶ物を作る事が
実は一番大切なんじゃないかって
俺は、思ってる




現に、このライヴハウスを
支えて来てくれた奴らは
そういう音楽好きの奴らだからさ」




「――― …はい」




「少しキツイ言い方をしてしまったけど

――― しばらくさ、うちでやってよ

君らはあんまりいじらないほうが
自由に伸びて行きそうだし


早い話が
Tシャツジーパンの君らの音楽に
踊り狂う客席が、俺は見てみたいね」





「…―― ありがとうございます!!」






ヒカルは…


マキちゃんも…




一気に顔をくしゃくしゃにして
わんわん泣いた ―――…