うちのおネコ様

「ハルがよろしくって、言ってたよ」

「えっ?」

私は一瞬ソファにいる猫の方を見てしまった。

「ハルは、美子ちゃんとは・・・一瞬しか会えなかったって言ってたから。」

「そうー・・・みたいですね。」


私は誰と話してるのか、そもそも何の話をしてるのかも分らなくなってきてしまった。

「まあ、いずれまた人間の姿で美子ちゃんの前に現れるから。」

その時話せばいいよと、ブルーは言った。

「っていうか、、ブルーは随分猫の時の記憶がはっきりしてるのね。」

私は昨日のルディと比べて、段取りよく話してくれるブルーに疑問を抱いた。

「うん、そうかもね。2回目だから・・・」

「2回目?!」どういう意味?

「え、それは・・・ハルやルディよりも先に人間になった事があるって事?」


私は驚きを隠せなかった。

「ううん、違う。んー・・・話すと難しいんだけど。それはボクじゃなくて・・ええと」

彼は説明に困っていた。見かけ16歳前後に見え、私とそんなに変わらないように見えるブルーは、ハルやルディのような大人っぽさは少ないけれど、純粋な「少年」という言葉が似合いそうな見た目だった。

ああ・・・そんな彼を困らせてはいけない。
それに昨日はこのタイミングで「それであんたはどうしたいの?」という質問をしてしまい、飼い猫にバカ呼ばわりされてしまったので・・・


「ああっ いいのいいの。あんたも色々事情があるんでしょう。思い出したくても思い出せない事だってあるんだもんねっ」

私はそういうと、「よし!朝だ朝だー」と一人元気な雰囲気を出し、リビングの雨戸を開けて夏の朝の日差しを家の中に呼び込んだ。


「ご飯にするよっ!」


私は2匹の猫と一人の少年に声をかけ、キッチンへ向かった。