うちのおネコ様

「そ、そう・・・」

ハルも何か「特定の感情」を抱いたんだ。

私は少し考えた。


家の中で飼ってるルディとブルーに関しては、実はうちの家族以外の人間と接触する機会はほとんどない。確かお向かいの高田さんは、2ヶ月くらい前に白猫のリリィちゃんを連れてきた。その時のリリィちゃんはそうとうルディにお熱だったらしいが・・・

それは人間にならなくてもなんとかなるだろ、と私は自分で突っ込んだ。
ん?まてよ。まさか、高田さんの奥さんに気があるんじゃないだろうな?!だってどう見ても若作りしても40代後半に見えるかどうかの奥さんだぞ?いくらなんでも年齢差がありすぎる。・・・ていうか、多分それはない。


ハルは・・・ハルは外で放し飼いにしてるから。もしかしたら、誰かにうちの家族以外の人間と接触し、何らかの感情とやらを抱いたのかもしれない。

それはそうとなると・・・なんか、飼い主として複雑な気持ちになった。
「特定の感情」というのは、必ずしも「恋愛感情」というわけでもないだろう。すぐに思った。思ったのだか・・・いかんせん昨日のハルは、カッコ良かったと思う・・・


「ーそれで、私は一体どうすれば・・・うぎゃあっ!」
 
ずっと俯いていた私の目の前には、いつの間にかルディが立っていた。ものすごく近い。今朝の布団の中程ではないが、ルディは私の顔をまじまじと覗き込むので、私は真っ赤になってつい、視線をそらし「何っ!?」と突き飛ばしてしまった。

「イヤー、なんかねー俺が持っていた美子の印象が違うんだよねぇ。」
「え?ナニそれ・・・」

そんなうちに来てもうすぐ1年たつんでしょ?と言おうと思ったが、やはりまだ見慣れない彼を前にして一瞬思いついたセリフはすぐに消えてしまった。。

「ふん。。ま、いっか!」

何がまいっかなのか、分らないが・・・。

彼は、よしっと意気込み私にこう言った。


「俺は!人間になったからには、色々人間じゃなきゃできない事がしてみたい!」

ルディはどこにも曇りの無い瞳で、これから始まる未知の出来事に期待を膨らませ、子供のようなくったくのない笑顔で美子の両手を取った。