記憶の破片

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電車に乗ってる時間も、家までの道のりをもどかしくて仕方なかった。


早く、この手に書かれた番号を押したい。



「ただいまっ」



玄関に入ってそう声を出すと、お母さんが顔を覗かせた。



「お帰り。遅かったわね」



「ん。ちょっと疲れたから部屋にいるね」



あんなに私のことを心配してくれたお母さんにくらい総さんのことを言えばいいのにって思うのに、なぜか言えなかった。


部屋に入るなり手の甲の数字とアルファベットを携帯に登録した。


…メールと電話、どっちがいいんだろう。


声を聞きたいけど、総さんからのメールを欲しい気持ちもある。


うーん…。


しばらく画面と睨めっこしたあと、メールの新規作成ボタンを押した。



【沙江です。今、家に着きました。今日はごちそうさまでした!】



電話にしようかとも思ったけど、なんか総さんは電話とか出なそうな気がしたからメールにした。


絵文字を入れるかどうかも迷ったけど、話し方も簡潔だしメールもシンプルなのが好きそうだなって思ったから私も使わないでおいた。



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