記憶の破片

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改札の前まで送ってくれて。


電車の時間が来て、改札を通らなきゃいけない時間になったとき、総さんが口を開いた。



「書くものあるか?」



「え?」



「書くもの」



「は、はい」



言われるがままにバッグからボールペンを出して手渡す。


総さんはボールペンを持つと、私の右手を掴んできた。



「ちょ、総さん?」



触れた手が一瞬で熱くなるのがわかる。



「じっとしてろ」



総さんはそれだけ言うと、私の右手の甲に何かを書き始めた。



「総さん?なに書いてるんですか?」



手を掴まれてるからじっとはしてるけど、くすぐったい。



「気をつけて帰れよ?」



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